無知の深淵を覗く時……。
- 作者: 鯨統一郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/02/24
- メディア: 文庫
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を読了。
『邪馬台国はどこですか?』の姉妹作である連作短編集。『ミステリーズ!』に連載していたので、全部読んではいるのだけれど、加筆とか書き下ろしとか解説とかが気になって、買ってしまった……。書き下ろしは無かったけど。
相変わらず突飛な説が飛び出して、中々面白いのだけど、色々気になる所が。まず、視点人物であるジョセフ。この人物は世界的に権威のある大学教授、という設定があるのに、それがまるで感じられない。宮田が言い出す珍説にただただ感動するだけで、まともに頭を使って無いようにしかみえないのだ(実際使って無いと思う)。それでも初めはかなり懐疑的で、それなりに研究者っぽいんだけど、後半になると、宮田自身を尊敬する素振りまで見え始める。もっと考えようよ。検証しようよ。考察しようよ。あ、一緒か。
第二の問題として、その珍説に説得力が無い。まともに論証してない。辻褄合わせの妄想推理化していて、とても「ありえるかも」という気にならない。前作『邪馬台国はどこですか?』は延々と論証に枚数が費やされていて、それなりの説得力もあったのに。宮田への"突っ込み役"早乙女静香の"突っ込み"が、揚げ足取りめいたものになっていたせいのなのかもしれない。彼女もイマイチ頭がよろしく見えないし。所詮狂言回し、作中で破壊されるべき常識的な学説と知識、を言わせる装置でしかないからか。
ようするに、全体的に薄い。いや、面白いのだけどね。それぞれで提示される説は、それを頭の中で弄ぶ事自体が楽しいし、快感。が、面白いがゆえに、気になると言うか、何と言うか……。
ちなみに私は「始皇帝の不思議」が一番読んでて楽しかった。
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私は辛口のほうが、感想が書きやすいようです……。厭な傾向だなあ……。
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『インディゴの夜 (ミステリ・フロンティア)』『れんげ野原のまんなかで (ミステリ・フロンティア)』『やさしい死神 (創元クライム・クラブ)』を購入。これで今月の小遣いはパー。アルバイトでもするかな……。