第398回

 

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)


 を読了。
 『fの魔弾 (カッパノベルス)』を書いた人とは思えないなあ、と思うほど良い出来。期待してよかった。

  • エッシャー世界」
    • 宇佐見博士が迷い込んだ、エッシャーの絵そのままの建造物が存在する世界。永遠に続く登り階段、永遠に循環し続ける水路、ありえない場所に柱が存在する修道院……。魅力的過ぎる。異世界からこの世界への帰り道を宇佐見博士が見出した時、"絵が犯人を告発する"謎と"犯人の正体"が見えていた。異世界とこの世界の"事件"が有機的に結びついていて、良い。面白かった。
  • シュレディンガーDOOR」
    • この作品集で最も重要……かもしれない作品。その意味は、最後まで読み終われば分かるはず。題の意味には多重な意味が持たせてあるようだ。過去の殺人事件の推理ということで、不足しがちなサスペンスを、時間制限を設ける事で補っている――訳では無いと思う。展開は意外とのんびりだし、こんなに呑気に話をしていて大丈夫なのか、と思うほどだからだ。「シュレディンガーの猫」思考実験の装置と似ている"処刑台"あるいは"棺桶"が登場するが、問題はここでの宇佐見博士だ。ネタバレになりかねないけれど、ここで宇佐見博士は――。
  • 「見えない人 宇佐見風」
    • 解説で指摘されているけれど、冒頭の"私"とは一体誰なのか。解説者の人とは少し違う解釈を私はしているのだけれど、詳しく書くとまたネタバレになってしまう可能性があるので、書かないでおきましょう。解釈は人それぞれするものだし、ね。現実との一種の相対性というか、幻想性がテーマの一つになっているけれど、そのテーマが露骨に出ている作品と言えるのかもしれない。ラストの引っ繰り返し方も、気持ちが良いほど笑える。
  • 「ゴーレムの檻」
    • 表題作。それに相応しく、この短編集で最長を誇る。
  • 「太陽殿のイシス (ゴーレムの檻 現代版)」
    • これは「ゴーレムの檻」」と込みで語るべきも


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 飽きたので、ほっぽりだしておきます。気が向いたら更新し直すかもしれませんが、たぶんしません。我にもっと力を!